景気の「体温」を正しく測るために:消費者物価指数総合に惑わされない景気判断
景気の「体温」を正しく測るために:消費者物価指数総合に惑わされない投資判断
経済の状況を映し出す鏡として、物価動向は常に市場の注目を集めます。特に米国では、物価指数は、金融政策への影響も大きいことから、その発表時には市場が敏感に反応しがちです。わが国では物価指数といえば総務省統計局が作成する消費者物価指数総合がそれにあたります。しかし、発表される数字の表面だけを追うのではなく、その「質」を見極める眼を持つことが、激動する市場環境で適切な投資判断を下すためには不可欠です。
なぜ「総合」だけではリスクがあるのか?
一般的に注目を集める「消費者物価指数総合」は、私たちの生活実感に近い一方で、短期的な価格変動が大きい品目(生鮮食品やエネルギー)の影響を強く受けます。これらの価格は、天候や国際情勢といった、必ずしも国内経済の基調を示すとは限らない要因によって、時に大きく振れることがあります。
例えば、ある月の消費者物価指数総合が予想を上回って上昇した場合、市場は「インフレ加速、早期利上げ観測」といった方向に短期的に反応するかもしれません。しかし、その上昇要因が一時的なエネルギー価格の高騰だけであれば、その後の反動安によってインフレ懸念はすぐに後退する可能性もあります。報道されるデータだけを鵜呑みにすると、こうした市場の「ノイズ」に振り回され、判断を誤るリスクがあるのです。
今回は、なぜ物価の「本当の姿」を見るために消費者物価指数の「食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合(以下、欧米型コアコア指数)」が重要なのかを解説します。
1.欧米型コアコア指数とは
欧米型コアコア指数は、総務省統計局が発表している消費者物価指数から「食料(酒類を除く)」と「エネルギー」を除外して算出する物価指数です。この指数は、天候や国際市況の影響を受けやすい品目を除外することで、物価の基調的な動きをより的確に捉えることを目的としています。
過去の例を見ても、消費者物価指数総合と、変動要因を除いた「コアCPI」が大きく乖離(かいり)する局面は度々ありました。このような状況下で消費者物価指数総合だけを根拠に積極的なリスクテイクを行うことは、潜在的なリスクを見誤る可能性があります。

元官庁エコノミスト、元参議院議員の金子洋一が投資に役立つ景気に関する情報をお送りしています。ここから先は読者登録(無料)が必要です。どうかご登録ください。