今のインフレは良いインフレではない

今、物価は上がっていることは確かである。しかしこれはコメ、食料、エネルギー価格など一度限りのコストプッシュ・インフレであり、景気が良くなったことによるデマンドプル・インフレではない。金融引き締めなど論外である。
金子洋一 2025.06.18
読者限定

 いま私たちが目の当たりにしている物価上昇は、賃金の加速度的な伸びや好況に裏打ちされた“良いインフレ”ではない。食料品、エネルギーといった生活必需品の価格が跳ね上がり、それが企業の仕入れコストを押し上げ、やむなく販売価格へ転嫁された結果として発現している“悪いインフレ”――すなわちコストプッシュインフレである。デフレよりはもちろんましではあるが、需要が熱を帯びているわけではなく、むしろ実質所得は目減りし、家計と企業双方に重しがのしかかる。こうした局面では、強硬な金融引き締めは景気をさらに冷え込ませるだけで、根本治療になり得ない。問題の核心は外生的コスト高にある。

日銀決定会合は現状維持だったが・・・

この記事は無料で続きを読めます

続きは、3740文字あります。
  • コストプッシュ・インフレ論の決定的な妥当性
  • 物価指標の正しい選択と基調判断
  • コストプッシュ・インフレという本質の直視
  • 求められる正しい政策対応と投資戦略
  • 念のための注意事項
  • 現状認識の再確認と進むべき道

すでに登録された方はこちら

読者限定
「景気が悪いのに利上げ?」を読み解く――あり得ない日銀の「のりしろ」論...
読者限定
「ギリシャより日本財政は悪いのか」:石破発言を検証
読者限定
金融政策のグローバル・スタンダード:なぜ2%のインフレを目指すのか
読者限定
景気の「体温」を正しく測るために:消費者物価指数総合に惑わされない景気...
読者限定
「投資で勝つためには、株式や金融市場の知識だけでは不十分。マクロ経済の...