「投資で勝つためには、株式や金融市場の知識だけでは不十分。マクロ経済の知識が不可欠」

株式などの投資では、企業の業績やテクニカルな分析だけでなく財政金融政策によるマクロ経済の動きを押さえることが必要です。このニュースレターでは政府日銀当局の意図をきちんと読み、投資に活かすことを目的とします。
金子洋一 2025.04.23
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【マクロ経済が読めなければ投資で勝てない】

2025年4月7日、日経平均株価は一時31,000円を割り込み、市場は大きな混乱に見舞われました。きっかけは、米国のトランプ大統領による日本製品への関税措置でした。市場が大きく動いた背景には、「世界貿易秩序の崩壊」という深刻な意味合いがあったのです。すなわち、国内経済の冷え込みを市場が先取りしていたのです。

このような局面で、「為替はどう動くのか」「米国株は持ちこたえられるのか」といった視点も大切ですが、何より重要なのは、いまマクロ経済全体で何が起きているのかを読み解く力です。企業業績やチャートの形からは、こうした外的ショックは予測できません。GDP、物価、金利、財政の相互作用といった、いわば「経済の地図」が読めなければ、投資は単なる投機に終わってしまいます。

たとえば、石破総理は当日の国会で「減税には言及すべきでない」と述べ、宮沢自民党税調会長は「財政悪化で円安が進む」と発言しました。しかし、これは典型的な「財政再建優先論」の落とし穴です。外的ショックに対して緊縮的な政策をとれば、民間消費と投資はさらに冷え込み、景気後退が本格化します。市場はすでにそのリスクを見抜いています。

過去を振り返ってみましょう。2014年の消費税増税の後、GDPはマイナス成長に転じました。消費税は個人消費に直撃する逆進的な税であり、引き上げれば景気は確実に冷え込みます。逆に、減税は最も即効性のある内需刺激策です。金融政策においても同じことが言えます。いま必要なのは「インフレ退治」ではなく「景気の防衛」です。日銀の政策金利は0.5%では高すぎます。0%に戻し、追加の緩和策を市場に示すべきです。

「財政が不安だ」「円安が心配だ」といった声に過剰反応するのは、木を見て森を見ない議論です。そして投資の世界でも、同じような過ちが繰り返されています。

投資家の皆さんにお尋ねします。「この企業の業績が良いから買う」という理由だけで株を保有していませんか? 実際には、どれだけ優れた企業であっても、世界経済が冷え込めば売上も株価も下がります。だからこそ、投資の成功には、経済の全体構造――すなわちマクロ経済の理解が欠かせないのです。

本当の意味で経済を読める投資家は、企業の価値だけでなく、金融政策の転換点、財政政策の方向性、家計の消費動向を見抜く力を持っています。チャート分析や企業決算だけでは、今日のような複雑な市場に太刀打ちできません。マクロ経済に基づく視点を、今こそ投資戦略に組み込むべき時です。

株価は企業だけの鏡ではなく、経済全体の風向きを映すバロメーターです。市場で生き残るためには、経済の構造と政策の流れを読み解く力を持つことが必要です。それこそが、持続可能な投資戦略への第一歩なのです。


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