物価上昇の時代の資産運用:米国100年のデータから
皆さん、お久しぶりです。お元気ですか。最近、資産の運用について考え直しています。特に注目しているのは、株式投資の長所と限界です。これからもこのニュースレターでは、景気や財政金融政策が資産運用にどのようにかかわってくるのかを中心に取り扱っていきます。
100年の米国での米国の株式、債券、金の動き
さて、状況を大きくつかむにはグラフが有効です。このグラフをご覧ください。ジェレミー・シーゲルは、ベストセラー『株式投資』の中で、米国の株式、債券、金の長期の成績を1枚のグラフにまとめています。これにならって、直近100年の米国での実績をグラフにしました。1925年末に米国の株式へ1ドルを投じ、受け取った配当をすべて株の買い増しに回し続けると、2025年末には1万7917ドルになりました。100年で約1万8000倍、年率にすると10.3%です。

縦軸は1目盛り上がるごとに10倍になる対数目盛りです。このグラフを読むときに欠かせないのが、名目と実質の区別です。取り違えた議論が多いので、先に整理します。
名目:物価の上昇を差し引く前の数字。金額がどれだけ増えたかを示します。このグラフの線はすべて名目です。
実質:物価の上昇を差し引いた後の数字。買える物やサービスがどれだけ増えたかを示します。持っているお金が2倍になっても、物の値段も2倍になっていれば、買える量は変わりません。この場合、名目では2倍、実質では1倍です。
この100年で、米国の物価は18.1倍になりました。年率では2.9%です。グラフの一番下の線がそれにあたります。
物価の上昇を差し引いた実質で見ても、株式は約990倍、年率7.1%でした。同じ計算をすると、金は約12倍で年率2.5%、長期国債は約5倍で年率1.6%、短期国債は約1.5倍で年率0.4%です。現金は増えないので、買える量は18分の1に減りました。
苦境を乗り越えてきた米国株式
株式は一直線に上がったわけではありません。グラフの縦線は、この100年の大きな出来事です。
世界大恐慌(1929年10月)。ニューヨーク市場の株価暴落をきっかけに、銀行が次々に倒れ、世界中が深い不況に陥りました。米国株は4年間で65%下落しました。
ニクソンショック(1971年8月)。米国のニクソン大統領が、ドルと金の交換をやめると発表しました。それまで金の値段はドルに対して固定されていましたが、ここから自由に動くようになります。グラフで金の線が大きく動き出すのはこのためです。
第1次石油危機(1973年10月)。中東の戦争をきっかけに原油の値段が約4倍に跳ね上がり、世界中で物価が急上昇しました。米国株は2年間で37%下落しました。
ITバブル崩壊(2000年3月)。インターネット関連の企業に期待が集まりすぎて株価が上がりすぎ、その反動で急落しました。米国株は3年間で37%下落しました。
リーマンショック(2008年9月)。米国の大手証券会社リーマン・ブラザーズが経営破綻し、世界的な金融危機に広がりました。米国株は1年間で37%下落しました。
株式はこうした下落のたびに持ち直し、その後に高値を更新してきました。